秋谷の家
これまでに賃貸、持ち家を含め幾多の居住経験をお持ちの施主が人生の集大成に考えた終の住処の計画である。別荘地としても人気が高い秋谷がその地として選ばれた。
敷地は海から真っ直ぐ登る坂のつづら折りの最初のカーブに位置し、南側道路を挟んで緑化公園、坂道を下った先に海が広がる。東側は住宅地への登り坂が擁壁で立ち上がり、北側は閑地を挟んで擁壁の上に住宅が建つ。さらに北西から西に向かっては6m下を川が流れ、西側は住宅が近接する。
この敷地を選んだのは、漂う穏やかな空気感と随所にみられる自然の恩恵を感じてのことだろう。さらに都会から離れて静かに書と向き合う環境を求めるがゆえ都市的なノイズは避けたい。そこで周辺環境を取捨選択して空間を構成をすることでこの地のポテンシャルを最大化することを意図した。
海へは距離があり眺める視界としては物足りないが、海を感じられることはこの地の重要な要素である。その存在は日常から書へと向き合う気持ちの切り替えにこそ相応しいと考え、書の空間の入口に海への視界を計画した。川へは高低差があるため室内空間全体を川へ向かって段状に下げ、屋根も呼応させることで無意識に川上方への抜けが生活に取り込まれることを意図した。さらに一部敷地内擁壁を解体して川の落差工近くに川床テラスを計画し、川の流れや音を日々感じられるように意図した。北側の閑地はその先の隣家の擁壁で視線が遮られた庭として活用している。
海や川、庭の緑へと多方向な抜けを確保する一方で、斜面地ゆえに周囲の高い敷地からの視線を遮るために、帽子を目深にかぶるかのように屋根を深く覆い被せて周囲との関係を調整している。
この地の魅力の最大化に努めることで自然を存分に享受できるクライアントの終の住処として、そして書家としての人生を彩る新たな住処として相応しい空間ができたのではないかと思う。
- Jaar
- 2021
- Projectstatus
- Built














