MRP

東京都港区, Japan

Foto © Kenji Masunaga

MRPは、都市の密集した環境の中で静寂と開放性を両立させ、住まい手に都市の利便性に加え、積極的に自然と交われる環境を意図して設計された。
敷地は東京・元麻布の住宅街に位置し、幹線道路から2ブロックほど奥に入った邸宅が立ち並ぶ閑静なエリアに佇む。夫婦と二人の息子が暮らすこの住宅は、家族や友人との集いや、リモートワークのための場として計画された。

300㎡弱という限られた敷地面積に対し、容積一杯の約600㎡の延床面積に、機能性と豊かさを両立させた。L字型の敷地に沿う直方体のボリュームは、整然とした佇まいの中に静かな存在感を放ち、後方に伸びることで街路から距離を置き、穏やかな生活空間を確保している。地下1階にはプール、ジムとゲストルーム、1階にはガレージとゲストルーム、2階には主寝室と子供部屋、3階にはLDKと書斎が配置され、それぞれの役割を明確に分節しながらも、緩やかなつながりが保たれている。ボリュームは密集する隣接建物との関係性に配慮し、合理的かつ緻密に構成した。

屋内外には緑化された中庭やバルコニーといった自然が点在し、硬質な建築の輪郭を優しく包み込む。アプローチを進むと地下のドライエリアから植物が伸び、既存の建物との間を柔らかく仕切る。玄関に入ると、ホール先の突当たりには地下のドライエリアから伸びる植物が窓越しに見え、南西から差し込む光がホールの行き先を照らす。2階の主寝室にはバルコニーが隣接し、光と風景を取り込むことで、日常に小さな自然との対話が生まれる。地下ではセットバックした壁面により生まれた庭が、ゲストルームやジム、プールに自然光を届け、地中にありながらも明るく穏やかな空間を実現している。3階のキッチンの西面には隣接する中庭を借景として大きな開口部が設けられ、光と風景がやわらかく内部に流れ込む。また広々とした東面のバルコニーには豊かな植栽が施され、屋上テラスは都市のパノラマビューを背景に、集いの場として機能する。

素材には、静謐さとともに、奥行きを感じさせる豊かな質感が求められた。シルバーとグレーのトーンを含む塗料がコンクリート壁を覆い、わずかな不均一性が強固なコンクリートの躯体に表情豊かな陰影を生み出す。この色調は室内にも引き継がれ、自然光が穏やかに反射する。一方、3階では白い壁面が光を拡散し、空間に開放感をもたらすと同時に、視線を都市の風景へと導く。

この住宅は、都市の密度の中に自然の気配を織り交ぜ、プライバシーと開放性の調和を図ることで、住まい手に静けさと新たな発見をもたらす。都市の中にありながら、自然の気配と静寂を纏う住空間がここに広がっている。