Foto © Takahiro Arai

「過去」と「現在」そして復興へ向けた「未来」
‘Past’, ‘Present’, and ‘Future’ Towards Reconstruction

南相馬市は2011年の東日本大震災で地震や津波の被害を受けた場所であり、南相馬消防署も被害を受け建て替えを余儀なくされ、震災後の混乱の中、消防署機能と広域消防本部機能を併せ持つ南相馬市の復興第一号公共建築として基本設計から3年余を経て竣工した。
多くの犠牲者を出したこの地は今なお人々の心の悲しみを感じる。そこで、地域の消防・防災・防災教育拠点として重要な役割を持つこのセンターは、将来に渡り市民が希望を持てる場所になって欲しいと考えた。

施設の両機能を繋ぐ中央の三層吹き抜け空間を象徴的に作り込み、市民に活用してもらえるような防災教育ゾーンとした。
トップライトと有機的な螺旋の構成、その象徴的な上昇の空間性がアフォーダンスを発生させ、人々の動きを誘導する。トップライトフレームは軽快に見せるために50mm幅のフラットバーの全溶接とした。設計段階のシミュレーションにより、風の力で重力換気による自然換気が行えるシステムを採用。建物全体に心地よい風が流れる仕組みだ。

この防災教育ゾーンでは展示デザインも手掛けた。上昇性のある空間とリンクさせながら、風化させてはいけない「過去」と、「現在」、復興へ向けた「未来」をテーマに構成し、津波が到達した高さも立体的に表現した。
1階から3階まで連続する展示壁や手摺は高さが異なり、場所ごとにあえて視線を遮らせている。震災での防災活動記録、世界から集まったメッセージなどの展示、ガラス越しに見える消防車、或いは活動する消防隊員の様子など、壁は場所ごとに見るべきものだけを見せる空間をつくった。これは消防活動の日常的な風景と、震災による展示が交互にシークエンシャルに続いてくことで、人々に防災を強く再認識してもらうことを意図した。

この場で何があったのか、そして、人間がどう行動し、どう心が動き、これからどうしようとしているのか。それらを示すことがこの防災センターのもう一つの有り様だと考えています。

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地域とともにある消防・防災拠点でありながらこの地の復興の象徴として、市民の活動と希望に溢れる開かれた場になることを願う。

建築空間での体験と展示空間での体験から得られる意味や価値をお互いに高め合い、人々に与える印象がより深いものとなる。また、小学校の子供たちや、全国、世界からこのセンターに訪れ、震災の記憶をたどり、さらに希望と勇気を感じ取れる場になることを願っている。

南面のファサードのルーバー。日差しのカットと道路反対側にある総合病院からの視線のカット、すだれのような二つの役割を持つ。

Foto © Takahiro Arai
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南相馬市消防防災センター

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Sede
福島, Japan
Anno
2015
共同設計
永山建築設計事務所

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