丘の家
2020年、コロナが蔓延する中で「丘の家」の設計が始まった。万が一の非常事態に備え、第2の拠点となるような広々とした場所があれば、どれほど心強いだろう。自給自足を目指して田畑を耕し、自然の恵みを享受し、自然と共生し、そして自然に感謝することで、より人間らしい暮らしができるのではないか──そんな漠然とした思いが形となり、まるで「大草原の小さな家」の舞台のような雄大な自然に囲まれた広大な敷地に、施主は導かれることとなった。
設計のテーマは、家族が心地よく過ごせる最小単位の「小さな家」。建物は、細長い四角い箱の上に折り紙のような薄い屋根を載せた、シンプルな構成となっている。低い玄関を抜けると、南側の自然を一望できる大開口を備えた、天井の高い空間へとつながる。
寝室とリビングの間に配置された箱型の構造には、リビング側にキッチンを設け、内部には冷蔵庫や洗濯機、衣類などを収納できるスペースを確保している。梁を現しにすることで、小さな空間ながらも奥行きを感じられるよう工夫した。
家庭菜園や庭の手入れ、雪かきなどに必要な道具を収納できるストレージスペースも設け、外部からは一見扉に見えない勝手口も用意している。温泉地に近い立地のため浴槽は設けず、シャワー室のみとした。薪ストーブは、薪さえあれば電気やガスに頼ることなく家全体を暖めてくれる。
最小限の住宅でありながら、大きなデッキと自然へと開かれた構成により、空間は外へと豊かに広がっている。
- Anno
- 2023














