Foto © Hiroyasu Sakaguchi

都心の幹線通り沿いに建つホテルである

約9.5m×7.5mの狭小地に地上9階建てのRC造を計画した。
いわゆるペンシルビルと呼ばれる建物形状や建設コストを鑑みれば、鉄骨造という選択が最も無難なのかもしれない。
一方で、交通量の非常に多い前面道路からの騒音や振動は、居住空間でもあるホテルにとってはけっして無視できない負の要因でもある。
これらのトレードオフのなかで、最終的には施主の後押しもあり、最終的にはRC壁式ラーメン構造を採用した。

平面計画は避難動線とエレベータを必要最小面積とし、残りをツインルームに割り当てるという極めてシンプルなものである。
2つの長方形を互いににずらし、できた余白がそれぞれエレベータホールとバルコニーになっている。
客室間の界壁はとくに高い遮音性能が求められるため、コンクリートでつくることは理に適っており、界壁と外壁すべてが構造に寄与するような壁式構造は同等規模の宿泊施設にとって合理的だと判断した。
柱梁のほとんどが壁や床に隠蔽されるこの形式は、梁の真下で寝ることを極端に嫌う風水的思想とも相性が良く、インバウンド客をメインターゲットとする運営方針と合致したことも追い風となっている。

西側大通りに面するファサードにはGRC(ガラス繊維強化コンクリート)製のブリーズソレイユ(日よけ庇)を設け、商業施設としての構えをつくるとともに西陽や騒音を軽減する機能を期待している。
全体として格子にみえるブリーズソレイユは、実際には216のL字型ユニットから構成され、奥行き方向の深さは5種類に分かれる。
上階にいくほどせいが大きくなり、寸法としては合計120種類のユニットが存在していることになる。
そして、それらが組み合わされることによって、スパイラルを描くグラフィカルなパターンが産みだされているのである。
ただし、120種類もの型枠を製作するにはコストがかかり、ここでは繰返し打設可能な鋼製型枠を用い、堰板の位置を変えることで寸法を調整する方法を採用した。
製作する型枠をたった1種類のみに限定することで、プレキャストであることのメリットを最大限に活かしている。
また、各ユニットには間接照明用の断面があらかじめ組み込まれており、夜間にはGRCの平滑な表面を反射板とした照明器具としても機能する。

Foto © Hiroyasu Sakaguchi
Foto © Hiroyasu Sakaguchi
Foto © Hiroyasu Sakaguchi
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ドウモホテル

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Sede
東京都新宿区, Japan
Anno
2018

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