成瀬・猪熊建築設計事務所

このホテルは中津川で木材関係事業を中心に展開する地元企業が、地域を盛り上げるべく計画した建築です。
ホテルが位置する岐阜県中津川市は、観光に特化するほどの名所の集積はない一方で、工業を中心とした産業が地域の雇用を支えており、徐々に人口減少・少子化が進む日本の典型的な地方都市のひとつです。
観光にもビジネスにも偏れない状況で、私たちは平日はビジネス客、休日は観光客をターゲットとし、滞在の質は旅館的、規模はビジネスホテル的、意匠は和風や伝統建築を意識しすぎず、丹念に地域性を織り込んでいくことで、この地域ならではの建築を作ることにしました。

配置においては、前面道路である旧中山道に対してイベント利用のための広場を確保するとともに、恵那山の裾野である立地をそのまま建築に取り入れ、1Fの床を奥に進むに従ってレベルが上がる構成としました。
また、館内にはクライアントが製材し、東濃地区を中心とした工場や職人の手によって作られた様々なヒノキの要素を散りばめ、ホテルが地域の木材関連産業のネットワークを束ねるハブのようになっています。

竣工から一年後、現在では付近の飲食店が当日では予約が取れないほど街に人が来るようになっており、地方都市におけるモデル事例となることを期待しています。