Foto © Ken'ichi Suzuki

土地の構造

箱根の山々と小田原の平野部の交わる辺り、その山側に敷地はある。
以前は果樹が植えられていた明るい里山中腹の緩く傾斜する土地で、南側の遠方には相模湾を望み見晴らしがよいが、北風からは、背後の山が敷地を抱くようにして、これを遮ってくれている。周囲に茂る落葉性の広葉樹林は、夏には涼しい葉影を作り、冬には自ら葉を落として少ない日光を地面にまで届け、山の水気を含んだ土を暖めている。そんな、人の居住に適した環境特性が、しずかに見つけられるのを待っているような敷地だった。
ここで建築家がやるべきことは、「家」を成立させる為に、「土地」に由来しない原理を新たに持ち込むのではなく、既に「土地」が持っている潜在的な「居住のポテンシャル」を引き出し、人の「住処」として十分な程度に、これを整理し増幅することであると考えた。つまり、そこにある「土地」が、全てを秩序づけているような状態として、建築を構成することを目指したのである。
そこで我々は、フレームを立て、屋根を架ける、という建築の最も根源的な要素にまでデザイン上の操作を還元し、これらの決定を「土地に委ねる」ことにした。
具体的には2組の全長12m程の門型フレームセットが用意され、これを緩くカーブする土地形状が要求する通りに、若干の角度を保って重ねて配置することで、中間スパンにトラスを持つ架構体が形成された。フレームはLVL-38×286mmでできているが、弱軸方向への水平力は天井面に形成されるトラス剛面で背後のコアにまで効率よく伝達されるため、その極薄のプロポーションで成立している(中間の梁の交点は6.3mという大スパンでの梁たわみを抑制してもいる)。また、このフィン状の柱は間に棚板を挟むことで半透過の仕切りとして空間を穏やかに分節してもいる。
更に、各梁はこの土地に降る雨量を壁面外へと捌くに十分な勾配を持った屋根を受ける為、それぞれ南から北へ順に下っていくので、高さ方向の変化がおこり、地形がもたらす平面的な角度と併せて、複合的な住行為が必要とする「偏り」が空間に付与されることになった。
以上のように、地形と雨量という土地の特性が、この建築に特別な「ジオメトリ」を与え、これが構造・空間を同時に決定し、また調和さしめている。
その語源通り、土地(=geo)を、詳しく測る(=metria)ことで、建築の秩序(=geometry)が定められる場合、当然ながら、これによって生み出される建築は、明晰な秩序を持ちながらも、同時に土地との連続性を保持することになる。
「土地をよく観察し、そこに潜在するジオメトリを見出すこと」
これが我々が行なったデザイン行為の本質であり、ほとんど全てと言っていい。

Foto © Ken'ichi Suzuki
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ジオ メトリア

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Standort
神奈川, Japan
Jahr
2011

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